2016年12月29日木曜日

彼らの休み




日本橋で事務所を間借りしているチヨとお昼ごはんを食べようと会いに行った。

ファブリックブランドを立ち上げたチヨは、その仕事で度々インドに行っている。現地では胃に合わない時もあって、意外とカレーを食べずホテルのレストランのパスタで済ませたりすることも多いらしい。

そろそろランチタイムが終わってしまう店も出てくる時間、どうしようかと三越前から京橋まで歩きラストオーダーちょうどで南インド料理屋のダクシンに入った。

ミールスセットは盛りだくさんだった。野菜カレー、魚のカレー、ヨーグルトの入ったオクラの白いカレー、ラッサム 、パパド、お米、ドーサにココナッツソース、ワダ(豆粉のドーナツ)。


ゆっくり味わいたいけど、15時で一度閉店ということで、唯一日本人のホールスタッフにやや急かされる。

「田中邦衛のモノマネしたろうか」(かの有名な『北の国から』の「(こどもが)まだ食ってる途中でしょうが!」というやつ)なんて言いつつ、カウンター越に目をやるとピカピカに皿を吹き終え手持ち無沙汰な様子のインド人スタッフたちがいた。どうやらお昼休み待ちのようだった。
彼らの休み時間が遅れるのも申し訳なく、15時きっかりには食べ終えた。

少し慌ただしい年末、美味しい食事を提供してくれた彼らがゆっくりごはんを食べられたらいいと思った。

                             (ダクシン/京橋)






2016年12月17日土曜日

汗かきへの羨望



小鳥のさえずりのような店名のカーナピーナは昔からある「町の喫茶店」のような佇まいだけど、入った途端にブワッとその香りに包まれるカレーのお店だ。

各テーブルとカウンター席の間にそれぞれ種類の違う花がそっけなくガラスコップに挿さっていた。
先客たちは皆「ハァハァ」言いながら汗を拭いている。

辛さはマイルド・セミホット・ホットとあり、セミホットでもかなり辛いらしい。
どうやら他のお客さんたちはセミホット以上を選んでいるみたいだけど、カレーは好きでも辛いのは苦手な拙舌、もちろんマイルドでチキンサグ(このカレーで辛いのはないと思う)とパラタを選ぶ。

そばの席の夫婦が額を拭きながら、「ビールが甘く感じる」と言っているのを聞き、やや心配になった。
でもチキンサグはスパイスのパンチが効いているけれど、辛くはなくとても美味しくて、デニッシュみたいなパラタと供にすいすい食べた。

店内を見渡すと、涼しい顔をしているのは私だけ、やはり皆汗だくだ。
もともと汗をかきにくい体質で、夏場など汗かきの友人に羨ましがられたりもする。
でもなんだかここで汗をかかずに済むのは心なしか惜しいことをしているような気がしつつ店を出た。 

                          (カーナピーナ/祐天寺)







2016年11月22日火曜日

今、「次」思う人たち




寒い雨降りの週始めの月曜だというのに、早い時間から恵比寿の吉柳はあっという間に席が埋まっていった。

まるちゃんはレッドビール。私は「最強のワタシ」という濃ゆく煮出されたハーブティーを。ひっかかる名前なので、聞いてみたら、enherbで売っているものらしい。「頑張ればもう一回出るよ」と言ったお兄さんはほんとに後でお湯を注ぎ足してくれた。気前が良いこと。

小鉢にチョコンとなんてものでなく、直径20cm程のお皿にぎっしり盛られたプリプリの白子ポン酢をまずは摘まむ。
どの料理もたっぷりでメニュー名からの予想の斜め上を行く盛り合わせだったりするのだ。


名物のカレーのラインナップから頼んだチキンのスープカレーは、たっぷりのグリルした鶏モモ肉にゆで卵、ブロッコリー、ナス、シーサーの絵型の蒲鉾、そして青さ海苔が乗っていて、すごく良い風味。
あさりのスパイスカレーは、これでもかと殻付きのあさりとゆで卵が入っていた。

目の前の料理を堪能しつつ、2人こっそり周りの人の食べているものも気になりチラチラ見る。
食べているそばから、メニューと照らし合わせて「次来た時はアレもだね、コレもだね」と話し合う。
きっと好物の白子ポン酢はまたまず頼むだろう。
全く未定の「次」を考えて楽しくて仕方ない。ありがたいお店だなと思う。


                               (吉柳/恵比寿)






2016年10月26日水曜日

はるばる越冬解決



とにかく寒さに弱い。まだ秋真っ盛りながら、昨日の夜は冷えて足元にレンジでチンする湯たんぽを置いていた。
今日の昼間は気温が上がったけれど、体調がいまいちだから手先が青かった。

お昼ごはんに食べたタップロボーンのアーユルヴェーダワンプレートは、円いお皿の真ん中にお米とパパドが、それをぐるりとピリ辛なチキンカレー、マイルドなダルカレー、香菜の和え物、しめじの和え物、ココナッツの入ったふりかけみたいなものが囲んで盛られていた。
「スリランカのお母さんの盛り付け」らしいけれど、スリランカのカレーは鰹節(モルディブフィッシュ)の出汁が利いているので舌に馴染みやすい。
体調を整えるためにつくられたものだそうで食べていたら、体がポカポカしてきて手先はほんのり赤くなった。

メニューの表紙のオーナーのプロフィール文に「日本の辛い冬をスリランカのスパイスで乗り越え、その経験をお世話になった日本人の皆さまに恩返しとして・・」とあった。
私はしっかり恩恵にあずかったようだ。
お店のスパイスはスリランカのオーナーの母から仕入れているらしい。オーナーの母に感謝だ。

このスパイス使いはマネしようもないけれど、夕食の炒め物にはたっぷり生姜を入れて作った。

                       (スパイシービストロ タップロボーン/青山一丁目)











2016年9月29日木曜日

あいち3/3 自分的ご当地



3日目のお昼は覚王山へ。
名古屋に明るい紘子から「名店だもの!」と聞いていた、えいこく屋へ行った。


直輸入の紅茶のお店と国産のドライフルーツを扱うお店とカレーのお店が並んでいる。
落ち着いた雰囲気のカレーのお店の一番奥の席で、チャナ豆のカレーを食べた。とろりと玉葱の甘味が効いて美味しかった。 食後のチャイもさすがに美味しかった。
居心地が良く、なるほど「名店」だ。

となりのお店に寄って、紅茶とドライフルーツををお土産に買った。名古屋土産はインド産の紅茶。

3日間いわゆる「ご当地グルメ」は、ほとんど食べなかった。(カレー煮込みうどんはそうみたいだ)
地のものを食べるのは良いけれど、「ご当地グルメ」ってそれほど惹かれなかったりもする。
その場所でいい店だな、美味しいなと思う自分的ご当地グルメが見つかれば楽しいのだと思う。

とは言え、帰りの新幹線で食べる用に甘辛い手羽先を買ったのだった。
窓に映る手羽先を頬張る女のワイルドなことだった。


                                                                                                              (えいこく屋/覚王山)







2016年9月28日水曜日

あいち 2/3 ネコに嫉妬








旅行2日目は豊橋に足をのばした。
しかし着いてから気づく、豊橋でのトリエンナーレの展示会場はお休みの日だった。
路面電車と正ハリストス教会の見学も目的だったしと、気を取り直しお腹をすかせつつ歩いた。


定休日のお店が多い中、営業中の味わいある店構えのラジャというお店に入った。
入ったとたん、入り口そばのテーブルに気持ちよさそうに寝そべる恰幅の良いネコと目が合いびっくりした。
店内はジャズが流れていて、レジは木製の赤い古い渋いもので、とても良い雰囲気だった。

種類豊富なカレーのメニューがあり、チキンと野菜のカレーを頼んだ。
付け合わせの入った容器には定番のラッキョウなどでなく、干しエビと生のスライス玉ねぎとカリッと焼いたパン粉にビーフジャーキーみたいなチップが混じったものが入っていた。

それらをかけて食べていたら、向かい合わせの椅子にネコが飛び乗ってこちらを見て、またびっくりした。

他の常連客らしき人たちは気にとめず、「○○カレー3辛で」と頼んだり、「いやぁ、いよいよ年金生活だよ」なんてお店の夫人と話していた。

いいな、いいな。こんなお店の常連で、こんな美味しいカレーが揃っているし。
こんなお店の中で自由にくつろぎ動きまわる毛並みの綺麗なネコにも、また妬けた。


                              (ラジャ/豊橋)





2016年9月27日火曜日

あいち 1/3 名古屋のサービス





あいちトリエンナーレを目的に名古屋に2泊3日した。

初日の夜はホテル近くの伏見にあるカレー煮込みうどんの店の鯱市へ行った。味噌煮込みうどんで有名な店の姉妹店だそうだ。全然和食店っぽくないダイナーみたいな店構えだ。


オーダーをとりにきてくれた店員さんはおでこに赤いポチがありインド系の方らしかった。
ほうれん草カレー煮込みうどん、ネギトッピングを頼んだ。

シャキシャキのほうれん草がたくさん乗っていた。煮込みうどんてグニャッとしてるのかなと思っていたら、すごくコシがあり美味しかった。   
おかきや豆菓子がたっぷり入ったビンと取り皿が各テーブルに置いてある。これがサービスというのが名古屋っぽい。
豆菓子が好きなので、ついいっぱいつまんだ。
昼にお茶した老舗の喫茶店では紅茶とプリンを頼んだら、サービスのゆで卵がついてきた。

名古屋は何がサービスされるか油断ならない。余計にお腹の隙間を作っておいた方がいいんだなと思った。

                              (鯱市/伏見)    







2016年9月18日日曜日

Dがない




キムと外苑前のアヒリヤに入った。
ランチはAからFセットの5種類ある。A、B、Cは北インドセット、E、Fは南インドセット。
…何かおかしい。Dがないのであった。

私はBセット、ミントソースの入りのチキンカレーと野菜カレーとタンドリーチキン、サフランライスのセット。
キムはEのマサラドーサにサンバルとココナッツチャタニ。どれも美味しかった。

お会計で、それぞれに何度も「B?E?」「ビー?イー?」と聞かれた。伝票もあり、2つに1つなのに。
Dを抜いたのは意図的なのかもしれない。



(アヒリヤ/外苑前)






2016年9月4日日曜日

その所作が良くて



自由ヶ丘のクルア・ナムプリックのカウンター席で、久しぶりに会った真理子ちゃんと話しつつ目の前でお店の人が細長い石臼でスパイスやハーブをこすりあわせている所作に惹かれていた。
それは、何かタレみたいなのと合わさって私たちが頼んだ青パパイヤのサラダになって出された。

そのあと食べたグリーンカレーも石臼でペーストを作っているらしい。
ホーリーバジルがたっぷり入って香りよくてすごく美味しかった。

うちにほとんど使っていないミキサーとミルのセットがある。パッケージにはジュースができるとかふりかけが作れるとか書いてあるのに、説明書によると、豆腐ですら細かく切って入れなくてはならないらしく、そんなことならと結局すり鉢やクラッシャーで用を足している。

お店の人が石臼ですり潰す所作を見ていたら、これは人間がする所作の中で実直で美しいものだなぁと思った。
最近はブレンダーが欲しいなと思っていたのだけど、石臼もいいなと思ってしまった。

                          
                    (自由が丘/クルア・ナムプリック)















2016年8月27日土曜日

昇り降りの選択



中学高校と神保町の女子校に通っていた。高2からはそこから歩いていける美術予備校に通っていて、1浪し足掛け7年神田神保町界隈に通った。

その後も古本屋をまわったり、展示を見たり、仕事の用であったりとこの界隈には度々来る。
高校まではせいぜい寄り道にファーストフードが関の山だったけど、今は「何食べよう」と楽しく迷う。
結局、さぼうる2で山盛りナポリタンを食べる率が高いのだけど、今日は店の外に行列ができていたのでやめた。

古いビルの狭い入り口に出てたメニューを見て、カフェヒナタヤに決めた。
手動式のドアの古いエレベーターは渋くてグっとくるものの、二重ドアは固めで重いし閉所恐怖症の気があるので狭さにハラハラした。
美味しいものにありつくための小さな、小さすぎる数秒の冒険のようだ。

4階のカフェ内はエレベーターとビルの感じからはガラッと雰囲気が変わり明るくてすっきりしていた。  
頼んだチキンカレーは カフェ飯とあなどるなかれの辛さで何度も鼻をかみ水を飲んだけれど、丁寧に作られている感じがしてすごく美味しかった。

帰りはあのエレベーターは避けて、やや急な階段を使ってそろそろと下りた。

                       
                                                                                                       (神保町/cafe HINATA-YA)

2016年8月3日水曜日

トロンプルイユと提灯






蒸し暑い夕暮れに、まるちゃんと恵比寿で待ち合わせた。駅近くの吉柳に入ろうとしたら、「予約で埋まっている」と言われ、がっかりしてそのまま駒沢通りを歩いた。

中目黒まで行くと、週末のお祭りに向けて商店街には提灯が飾られていた。その脇道にある小さな可愛らしいスリランカ料理屋のセイロンインに入った。

メニューに目移りして選んだのは、ゴータンバ(もちっとした薄い生地に香辛料で炒めた野菜を包んで焼いたもの)、フィッシュカレー、ほうれん草カレー、空芯菜とエビの炒めもの、ロティ、ジャスミンライス。

最初にでてきたゴータンバの皿が素敵だなと思ったら、縁取りの柄に一瞬見えたのは細長く切った人参とセルフィーユのような葉を組み合わせたものだった。
まさかのトロンプルイユに和んだ。

あとからジワッと効いてくる香辛料にコホコホしたり、ゲラゲラ笑ったり、珍しく真面目な話も美味しいものたちと共に進んだ。

店を出ると、暑さが和らいでいて涼しい風が吹いた。また提灯を見て「お祭り行きたいな」とまるちゃん。
人参と葉のトロンプルイユ、スパイスの香り、提灯、夜風…。
  こういう夏の夜の何気ない時というのは、後からフッと思い出したりするんだろうなぁと思いながら、ここに記す。

                           (セイロンイン/中目黒)






2016年7月28日木曜日

両隣の魅力


目黒のギャラリー兼本屋、金柑画廊の戸を開くと、与論島出身の犬のジョンくんが寄ってきた。その後を追って太田さんが迎えてくれた。

太田さんが「カレー食べてます?」と聞くので、確かにさっき食べたけど匂いがするのかなと思ったらそうではないらしい。
ここに来る前に寄った人たちが揃ってスパイスの香りを染み込ませてくるカレー屋があって、いつも食欲をそそられるらしい。

私が寄ったのはそのお店にも近い、タダカレーというお店だった。幅広のカウンターテーブルやランプや戸棚など全部が小粋で感じよかった。
チキン、キーマ、グリーンカレーとある中、迷ってキーマカレーにした。
盛りがよく、ひよこ豆、ダール豆、レンズ豆が入っていて美味しかった.

でも右隣の都知事選の話をしている声の低いおじさんたちと、左隣のシュッとした女性が食べていたグリーンカレーも野菜が多種ゴロゴロ入っていて美味しそうで・・「あぁ、あれもよかったかも」なんて太田さんに話したのだった。
今度ここへ来る前は、そのグリーンカレーを食べに寄ろうか、例のスパイスの香りが染み込むという店にしようか、それとも他か…。楽しい迷い事だ。また太田さんにも報告するのだと思う。

                           (タダカレー/目黒)









2016年7月9日土曜日

皮とか臓とか




紘子の個展を見に、ヤスくんとアッキーと西荻窪に集まった。展示を見た後、看板の「砂肝カレー」に惹かれて、ラヒパンジャービーキッチンへ入った。

こじんまりした可愛らしい店内、イラストレーターの安西水丸さんが生前ひいきにしていたそうで絵や著書が置いてある。

ジオラマみたいにたっぷりスパイスが絡まった鳥皮のフライが美味しくて、序盤から私以外の2人のビールはどんどん進んだ。
そしてヤスくんもアッキーも大満足のチキン砂肝のカレーとマトントリッパのカレーは最高だった。

どうも昔から、皮とか臓物が好きだ。
母曰わく、弟がお腹にいたころ鉄分補給にと焼鳥屋で買ったレバーを食べていた母に感化されてか、まだまともに口が回らないような歳の私も「レバー、レバー」と訳も分からず言っていて祖母がびっくりしたらしい。

すっかり訳も分かる歳になっても、焼き鳥ではレバーも砂肝も皮も必ず選ぶ。
スパイスと絡んでもやっぱり美味しいのを堪能できるとは。お酒こそ飲めないながら、大人は楽しい。

(ラヒパンジャービーキッチン/西荻窪)







2016年6月28日火曜日

ハシゴは急に渡されて② 〜上等な呑んべい〜



中谷さんが最初に連れて行ってくれたお店は臨時休業だった。 それではと、友達がやっている別のお店に行こうと向かったのが原宿のキャットストリートにある「ブリティッシュインディアンカフェ1930」だった。

赤が基調で可愛らしい店内に真っ赤なサリーを着た女性が座っていて気になっていたら、店主のギリさんの母親だった。
ドーサセットとナンとシーフドカレー、カッテージチーズカレー、チキンカレーなどを食べた。
自家製のジンジャーシロップのジュースも美味しかった。

お酒好きには、下戸は面白くないだろうと恐縮してしまう。でも中谷さんは下戸が面白くない酒飲みは酒飲みとして上等ではないんだと言い、カレーを食べる私をニコニコ見ながらビールを飲んでいた。

そう、中谷さんはとてもフランクな方なのだ。飲んべえにも下戸にも、年の離れた私たちにもギリさんにも、誰にでも。
数々のびっくりするくらいすごいお仕事のお話もケロッとする。そして全ての所作がスマートで少々の下ネタを言ったって品がある。
試しにほんの一口もらったシャンディガフは、のどがビリビリしたけれど(炭酸も苦手なのだ)思いの外美味しかった。

              (ブリティッシュインディアンカフェ1930/原宿)






ハシゴは急に渡されて① 〜昼は野菜に満ちる〜




まるちゃんと表参道のハブモアカレーでお昼ごはんを食べた。
ここのカレープレートは野菜とスパイスのおばんざい御膳といった感じだ。

使われている調理前の野菜を全部並べたら、さぞ鮮やかだと思う。そしてそれをポストカードにしてほしい。
ターメリックライスに、パープルからし菜とチキンキーマカレー、きみひめ(とうもろこし)とレタスのダル(レンズ豆のカレー)、バターナッツかぼちゃのアチャール(漬け物)、カボチャとカボチャの弦のポリヤル(ココナッツ風味のスパイス炒め)や、紅くるり大根と大納言小豆のドライカレーなど、滋味深いけどボリュームがあり満たされた。

その後、歩きまわり最後に寄ったタンバリンギャラリーで中谷さんと遭遇し、またカレーの話になった。界隈には美味しいカレー屋が多いのだ。話しているうちにまた食べたくなってきた。
中谷さんに夕食にカレーをご馳走しよう、とありがたいお誘いを頂き、こうしてまるちゃんと共に思わぬ「はしごカレー」をすることになったのだった。

                       (ハブモアカレー/表参道)





2016年6月23日木曜日

スタジアムのゲン担ぎ





「意外」とよく言われるけれど、昔からサッカーが好きだ。 Jリーグでは、チーム事情の変容に気持ちが付きつ離れつしながらも、ゆるりと浦和レッズを応援している。

久しぶりに埼玉スタジアムへ浦和レッズvsFC東京の観戦に行った。
スタジアムを目指して浦和美園駅から歩く道すがら、色々なフードワゴンが並んでいる。
焼きそば、ケバブサンド、カレーなどなど‥、お腹は空いていたけれど、決めきれずにスタジアムに入って売店を物色した。
その中で、「ロッカールームミール」というブースを見つけた。選手が試合後にロッカールームで食べるメニューらしく、今日はポークカレーとあり即決で買った。

前から2列目の、コーナーフラッグのすぐ目の前の席で、キックオフ前に食べた。ホクッとしたジャガイモとニンジン、豚肉がゴロゴロ入っていて、トマトの風味がして美味しい。
試合はあまりに不甲斐ない内容で前半を2点ビハインドで折り返し、意気消沈気味で向かえた後半に逆転劇が待っていた。3-2でレッズが勝ったのだった。
舞い上がり叩いた手のひらをジンとさせながら、今度観戦する時もカレーを食べようと思った。
そういえば前もカレーをスタジアムで食べたとき快勝したことがあったのだった。試合後のロッカールームミールならぬ、試合前のスタジアムスタンドミールは、ゆるいゲン担ぎのカレーである。

(ロッカールームミール、埼玉スタジアム/浦和美園)

2016年6月4日土曜日

誰かのお母さん



前に、ある人から聞いた話で、実家の母親が営む定食屋の看板メニューの名前を「お母さんの~」に変えたら、売上が伸びたということだった。
どこかのチェーンの飲食店のメニューにも、そんなのがあった気がするが、みんな本当に「お母さん」が好きなのだなと思った。 「お母さんの洗濯バサミ」とか「お母さんの布団」とか出したら売れるんじゃないだろうか。

池袋のランチハウスミトヤは、ランチタイム関係なく通し営業で、食事時には中途半端な夕方の時間帯にも男性客ばかり何組か入っていた。
壁にはぎっしりメニューの紙が貼られていて、「自家製チーズハンバーグ定食」や「カニクリームコロッケ3個定食」などなど全てボリュームがありそうだしリーズナブルだ。
そんな中、「お母さんのカレーライス」というのが目に付いた。「お母さん」恋しさは微塵もないが、頼んでみた。

ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、薄切りの豚肉の入った日本人が誰でも食べたことのある当たり前のカレーライスだった。 味噌汁も付いている。 
最近インド料理にかぶれている舌に「ああ、これがカレーライス」と記憶を蘇らせる味は、妙に美味しくスイスイ食べた。 

ホールもキッチンにみえるスタッフもみんな男性で、「『お母さん』どこ?」と思ったけど、あれは確かに、どこかの誰かのお母さんのカレーライスと感じてしまう味なのだろう。 

                         (ランチハウスミトヤ/池袋)





2016年5月31日火曜日

大人の上階



女性ばかり5人で食事をした。

銀座の博品館ビルへ入って、「最近はこんなオモチャあるんだねー」と油を売りつつ大人の一行はエレベーターで6階へ、カーンゲバブビリヤニというお店へ。
前にインド人に系列店を薦められて行って以来、ファンになったお店だ。

ここはもともと量が多い上、サービス品も出してくれるので、5人でそれぞれ頼んだものが並ぶとテーブルは絢爛豪華な様になった。
ビリヤニとマサラドーサ、大きなナンとロティ、キーマカレーにマドライカレー、エビとトマトのカレー。初めて食べたフィッシュヘッドカレーとニハリ(骨付きのラムが長時間煮込まれている)もすごいインパクト。

あれもこれも試したい女5人、右に左に手を伸ばし、分けたり、皿をまわし、しゃべり、いそがしい。
どれもなかなかスパイシーで、多少咽せつつ、水やラッシーもすすむ。

下の階は、オモチャでいっぱいの子供の夢空間(大人も楽しいのだけど)ながら、見晴らしのいいこの階で、大人には大人の楽しみを味わえるのだ。

                       (カーンゲバブビリヤニ/銀座)

2016年5月20日金曜日

マンゴーと遊園



記憶にないけれど、ほんの小さい頃、祖父母の家から近い荒川遊園によく連れて行ってもらったらしい。
今は全く土地勘のないその近くに住む友人のわたべちゃんに会いに行った。

都電の線路沿いはカラフルなバラが茂っていた。荒川車庫前で降りて待ち合わせた。通り沿いで一際目立つ派手な看板の南インド料理屋、なんどりに入った。

ミールスにはパプリカのカレーとコショウのカレー、そしてマンゴーのカレーが付いていた。
「マンゴーのカレーは今週だけだよ。季節ものだから」と店主。
ンゴーの果肉とヨーグルトとココナッツミルクが入っている。決してデザートっぽい味ではないし、米とも合うのが不思議だった。

初めての味の余韻を口の中に残しながら、30年近くぶりであろう荒川遊園へ行った。
微塵も絶叫度のない芋虫型コースターも小さなコーヒーカップも観覧車も、ふれあい広場で、至近距離で見た見事な孔雀も羊の毛の感触も、ノスタルジアをおぼえるよりは新鮮な感動でいっぱいだった。

                         
                             
                           (なんどり/荒川車庫前)

2016年5月10日火曜日

黙々と幸せ



吉祥寺のハモニカ横丁にあるpiwangは、すこぶる小さいスペースのカレー屋だ。L字のカウンターに、お尻の大きな者には少し幅狭な長椅子には3人が座れ、角を挟んでもう2人分立席がある。

ツバの大きな帽子にロングの開襟シャツのスナフキンのような店主が小さな声で接客している。「店内の会話は小さな声でお願いします。」と張り紙にあった。
小声で頼んだチキンカレーとイカとトマトのカレーの2種盛りは、丸いお皿の真ん中に堤防のようにピシッと細い矩形に盛られたターメリックライスを境にそれぞれのカレーが注がれていた。
どちらもホールスパイスがゴロっと入ったサラサラのカレーで真ん中の米を崩しながら食べると交ざり合うけど美味しかった。

店内の5名になった(満員)客は、同じ2種盛りのカレーを注文していた。そのうち立席のカップルも含め黙々と食べていた。
ワイワイと会話を楽しむ食事も良いけど、独りでの食事も結構好きだ。ながら食いじゃなくて、ひたすら食べ物に向き合う。お皿のどこからどう手をつけようか考える。そして脳みそが味でいっぱいになる。
piwangではそうならざるを得ない。幸せな孤高の時間だ。 
      

                              (吉祥寺/piwang)

2016年4月28日木曜日

彼女の好きなもの





久しぶりに紘子とゆっくり夜ごはんを食べた。
西新宿に立て込む飲食店は、連休前の最後の平日とあって飲み屋を中心にどこも早い時間から客入りが多い。
魅力的なお店が多い中、インド料理屋のムットに入った。

南北のインド料理の豊富なメニューにあれこれ迷いながら、紘子はビリヤニのセットを、私はウタパム(米粉に野菜を入れて焼いたもの)のセットを頼み、分けつつ食べた。

ビリヤニは骨付き鶏股肉がドンと一本入ってなかなかのボリューム、チキンカレーも付いている。
ウタパムは野菜カレーとココナッツソースを浸けて食べる。パチャリというココナッツがたっぷり入ったサラダも美味しかった。

「美味しい、美味しい」と食べながら、久しぶりで話すことが色々ありそうなものだが、なぜか好きな食べ物の話が続いた。
そういえば、長いつきあいながら、のんべいで甘いものも好きな食いしん坊ということは知っているが、紘子の好きなものといえばというと分かっていなかったかもしれない。

嫌いなものはなくて何でも好きらしい。その中にビリヤニやインド料理も仲間入りしてくれたことと思う。そうだといいなと思う。


                               (西新宿/ムット)

2016年4月20日水曜日

みぼうじんの野菜炒め


新橋の駅前のバラエティ豊かなテナントの入ったニュー新橋ビル。その3階、両隣が弁護士事務所の、みぼうじんカレーという店がある。

扉を開けると、およそ「みぼうじん」とは遠い若いはつらつとした女性店員が迎えてくれた。
カウンター越しに見えるキッチンでは、年長の女性がジュージューと鉄のフライパンを振るっていた。

壁際の黒板には「ひとりの体じゃないのよ 健康長寿の豆知識」とあり、以下のように書かれていた。

 * * * * *
・クルクミンの力
・野菜を食べる(炒めて無理なく)
・R1乳酸菌の力(ラッシーにしました)
・高周波音楽(モールアルトです)
・適度な運動(速歩で帰りましょう)
 * * * * *

「みぼうじん」て「未病」にもかかっているのかな。そしてこのしっとりしたBGMはモーツァルトだったのか・・。モーツァルトは早死にしたけれど。しかし決してカルト的な雰囲気ではない。新橋のサラリーマンが多いであろうお客さんの健康をケアする明るい清々しい店なのだ。

カレーはどれも野菜炒めが乗っかったもので、チキン野菜炒めカレーを食べた。
黒っぽいトロっとしたカレーとターメリックライスに、キャベツ えのき タマネギ もやしがたっぷりの野菜炒め、これがキッチンの女性が振るうフライパンの中味だったのだ。シャキシャキして美味しかった。
ボリュームたっぷりだけど、ちっともしつこさがない。
「速歩で」ではないけど、お腹が満たされつつも重くない身で店を出た。

                             (新橋/みぼうじんカレー)

2016年4月16日土曜日

好きあらば無粋




池袋の西口の飲食店ひしめくエリアにあるZEROという店で、ゆきえちゃんとランチのターリー(カレーなどのセット)を食べた。

ワインと天然酵母のパンが売りのお店らしいけど、インドカレーも食べられる。
ワイン好きといったら、グラスをゆらしながら講釈たれるような偏ったイメージが少しある。
カレー好きも、ちょっとインド(や、その周辺国)料理に詳しくなると、「いやね、実際インド人はあんまりナンは食べないんだよ。よくある大きいやつ、日本人が喜ぶから出してるだけなんだよ。ビジネス用よ。」なんて講釈たれていたりもする。

ターリーは、 バイーンと大きな「ビジネスナン」でなく薄焼きのチャパティが選べたし、バスティマライスもついきた。
「チャパティって何?」と聞かれて応えたのを皮切りに、「ラッサムはトマト味のスパイススープみたいので」とかほかのものも教える。ラムのカレーやキノコのカレーやサブジやココナツソースなど2人ともどれも美味しく平らげた。
食べたり飲んだりしながら講釈たれるなんざ無粋だなぁと思いつつ、好きなものを語る楽しさもあるのだ。愛あらばしょうがない、愛あらば面倒くさい。

                                  (ZERO/池袋)

2016年4月7日木曜日

カウリスマキの配色




近辺に美味しい匂いを漂わすredbookは、外観はその名の通り赤い。
でも室内の壁は青緑で古くなった椅子の赤が鈍くも目立つ。棚に置かれた2匹の招き猫も赤い。
この配色が、アキ・カウリスマキの映画を彷彿とさせる。青緑の壁の部屋にソファーの座面や花などの赤が映えるようなあの感じ。
カウリスマキの映画はあまり美味しそうなものは登場しないけど、redbookのカレーはすごく美味しい。骨付きの鶏肉が入ったインド風チキンカレーはパパドも付いているし、ホールスパイスがバシッと入っている。タマネギをすりおろした手作りらしきドレッシングが美味しいサラダもいい。
そういえば、家の近くのTSUTAYAはカウリスマキ作品が減ってしまった。リバイバルの特集上映か新作がかかるのを待っていよう。
                               (redbook/中目黒)

2016年3月24日木曜日

スープのギャップ

現代美術館へ行くのに清澄白河で降りた。「キヨスミシラカワ」って口当たりが気持ち良いような、声に出して言いたい駅名だなぁなどと思いながら歩いていたらお腹が空いてきた。
商店街を抜けて、美術館のある大通りへ出る角にある南インド料理屋のナンディニに入った。


パンケーキのような米粉のドーサとサンバル(野菜カレー)、ピリ辛のココナツソース、タピオカのデザートのセットを食べた。
ドーサは練り込まれたニンジンとパセリが白地に映えて可愛らしく、フカフカですごく美味しかった。

サービスで出されたスープは何故かキッチュな絵のついたプラスチックの両取手の離乳食用のような器に入って出てきた。セットの入ったシルバーのプレートとの不釣り合いぶりときたら。
急がしそうに動くホールのインド人スタッフがそのスープをそーっと出すさまは妙に愛らしかった。
器に合わずスープは少ししょっぱかった。


                             (清澄白河/ナンディニ)

2016年2月22日月曜日

米の「ヒマラヤ」




まるちゃんと渋谷のムルギーに行った。
私は玉子入りムルギーを、まるちゃんは同じのの辛口を頼んだ。

キッチンのある方に目をやると、カウンターに白くて尖った山が見える。
名物の山の形に盛られたご飯で、薄めだが高さがあってエッジが立っている。  
ご飯の山の頂きにスプーンを入れようとしたら
「え!いきなり崩すの?」と言われ、やっぱり山の麓の方から手を入れることにした。 

今まで何度か来ていて、何年か前に来た時は甘口(チャツネが増量されてたんだと思う)にしてもらっても、水をいっぱい飲みながら食べていたけど、今回はふつうの辛さでも全然平気になっていた。
少し辛さに強くなったのかもしれない。きれいに山を崩しながら、美味しく食べた。

私もまるちゃんも池波正太郎の本が好きである。
ムルギーは彼の贔屓のお店の1つで、このご飯の山を「ヒマラヤ」と呼んだらしい。彼はこの「ヒマラヤ」の、山頂と麓のどっちからスプーンを入れたんだろうか。

                           (渋谷/ムルギー)