汗かきへの羨望
小鳥のさえずりのような店名のカーナピーナは昔からある「町の喫茶店」のような佇まいだけど、入った途端にブワッとその香りに包まれるカレーのお店だ。
各テーブルとカウンター席の間にそれぞれ種類の違う花がそっけなくガラスコップに挿さっていた。
先客たちは皆「ハァハァ」言いながら汗を拭いている。
辛さはマイルド・セミホット・ホットとあり、セミホットでもかなり辛いらしい。
どうやら他のお客さんたちはセミホット以上を選んでいるみたいだけど、カレーは好きでも辛いのは苦手な拙舌、もちろんマイルドでチキンサグ(このカレーで辛いのはないと思う)とパラタを選ぶ。
そばの席の夫婦が額を拭きながら、「ビールが甘く感じる」と言っているのを聞き、やや心配になった。
でもチキンサグはスパイスのパンチが効いているけれど、辛くはなくとても美味しくて、デニッシュみたいなパラタと供にすいすい食べた。
店内を見渡すと、涼しい顔をしているのは私だけ、やはり皆汗だくだ。
もともと汗をかきにくい体質で、夏場など汗かきの友人に羨ましがられたりもする。
でもなんだかここで汗をかかずに済むのは心なしか惜しいことをしているような気がしつつ店を出た。
(カーナピーナ/祐天寺)