2017年11月7日火曜日

越年キーマ




「この界隈なら他にもいっぱい美味しそうなところあるよね」と言ってみても、チヨの頭の中は本石亭一択のようだった。

約1年ぶりに会う事になったのは、仕事の打ち合わせを兼ねてだったが、去年会った時、店構えと漂う香りに強く惹かれつつ入りそびれた本石亭にリベンジしようということになったのだ。

神田の細い路地の奥、ランチタイムの早い時間帯にも関わらずサラリーマンたちが店頭で並んでいた。 チヨは自転車を停め、迷わず「並ぼう」と言った。

少し待ってに入ると、こじんまりした店内は薄暗く、案内されたすぐそばの席を一瞬見落とした。
ランチタイム最盛ながらバータイムのようなムード。お店の男性2人の出で立ちもバーテンダーのそれのようだ。

私達が頼もうとしていたキーマカレーはすでに売り切れていて、チヨは欧風カレーにビーフコロッケトッピングを私はインド風カレーに温野菜トッピングを注文した。


並ぶサラリーマンたちのお腹を満たすだけあり、雰囲気とは意外にがっつり量のあるご飯の盛り。
チヨのコロッケ付きのカレーは、どこの食べ盛り男子の飯だよという感じだった。
具も大きくゴロゴロ転がるが、ボリュームだけでなくカレー好きな人がじっくり研究しているのだろうと思う深い味わいで、隅から隅まで気を行き届かせているようなごまかしのない感じがした。
1年越しで来られた喜びも噛み締めつつ、私のインド風カレーはなかなか辛く水もまたすすんだ。


来年にかけてゆっくり進める仕事、この案件を考える度、本石亭の薄暗い店内をそよぐスパイシーな香りがよぎるに違いない。逃したキーマカレー、次こそ、多分来年、食べようと話し合った。そして私も次はコロッケをトッピングしよう。


                          (本石亭/神田)