久しぶりに紘子とゆっくり夜ごはんを食べた。
西新宿に立て込む飲食店は、連休前の最後の平日とあって飲み屋を中心にどこも早い時間から客入りが多い。
魅力的なお店が多い中、インド料理屋のムットに入った。
南北のインド料理の豊富なメニューにあれこれ迷いながら、紘子はビリヤニのセットを、私はウタパム(米粉に野菜を入れて焼いたもの)のセットを頼み、分けつつ食べた。
ビリヤニは骨付き鶏股肉がドンと一本入ってなかなかのボリューム、チキンカレーも付いている。
ウタパムは野菜カレーとココナッツソースを浸けて食べる。パチャリというココナッツがたっぷり入ったサラダも美味しかった。
「美味しい、美味しい」と食べながら、久しぶりで話すことが色々ありそうなものだが、なぜか好きな食べ物の話が続いた。
そういえば、長いつきあいながら、のんべいで甘いものも好きな食いしん坊ということは知っているが、紘子の好きなものといえばというと分かっていなかったかもしれない。
嫌いなものはなくて何でも好きらしい。その中にビリヤニやインド料理も仲間入りしてくれたことと思う。そうだといいなと思う。
(西新宿/ムット)
新橋の駅前のバラエティ豊かなテナントの入ったニュー新橋ビル。その3階、両隣が弁護士事務所の、みぼうじんカレーという店がある。
扉を開けると、およそ「みぼうじん」とは遠い若いはつらつとした女性店員が迎えてくれた。
カウンター越しに見えるキッチンでは、年長の女性がジュージューと鉄のフライパンを振るっていた。
壁際の黒板には「ひとりの体じゃないのよ 健康長寿の豆知識」とあり、以下のように書かれていた。
* * * * *
・クルクミンの力
・野菜を食べる(炒めて無理なく)
・R1乳酸菌の力(ラッシーにしました)
・高周波音楽(モールアルトです)
・適度な運動(速歩で帰りましょう)
* * * * *
「みぼうじん」て「未病」にもかかっているのかな。そしてこのしっとりしたBGMはモーツァルトだったのか・・。モーツァルトは早死にしたけれど。しかし決してカルト的な雰囲気ではない。新橋のサラリーマンが多いであろうお客さんの健康をケアする明るい清々しい店なのだ。
カレーはどれも野菜炒めが乗っかったもので、チキン野菜炒めカレーを食べた。
黒っぽいトロっとしたカレーとターメリックライスに、キャベツ えのき タマネギ もやしがたっぷりの野菜炒め、これがキッチンの女性が振るうフライパンの中味だったのだ。シャキシャキして美味しかった。
ボリュームたっぷりだけど、ちっともしつこさがない。
「速歩で」ではないけど、お腹が満たされつつも重くない身で店を出た。
(新橋/みぼうじんカレー)
池袋の西口の飲食店ひしめくエリアにあるZEROという店で、ゆきえちゃんとランチのターリー(カレーなどのセット)を食べた。
ワインと天然酵母のパンが売りのお店らしいけど、インドカレーも食べられる。
ワイン好きといったら、グラスをゆらしながら講釈たれるような偏ったイメージが少しある。
カレー好きも、ちょっとインド(や、その周辺国)料理に詳しくなると、「いやね、実際インド人はあんまりナンは食べないんだよ。よくある大きいやつ、日本人が喜ぶから出してるだけなんだよ。ビジネス用よ。」なんて講釈たれていたりもする。
ターリーは、 バイーンと大きな「ビジネスナン」でなく薄焼きのチャパティが選べたし、バスティマライスもついきた。
「チャパティって何?」と聞かれて応えたのを皮切りに、「ラッサムはトマト味のスパイススープみたいので」とかほかのものも教える。ラムのカレーやキノコのカレーやサブジやココナツソースなど2人ともどれも美味しく平らげた。
食べたり飲んだりしながら講釈たれるなんざ無粋だなぁと思いつつ、好きなものを語る楽しさもあるのだ。愛あらばしょうがない、愛あらば面倒くさい。
(ZERO/池袋)
近辺に美味しい匂いを漂わすredbookは、外観はその名の通り赤い。
でも室内の壁は青緑で古くなった椅子の赤が鈍くも目立つ。棚に置かれた2匹の招き猫も赤い。
この配色が、アキ・カウリスマキの映画を彷彿とさせる。青緑の壁の部屋にソファーの座面や花などの赤が映えるようなあの感じ。
カウリスマキの映画はあまり美味しそうなものは登場しないけど、redbookのカレーはすごく美味しい。骨付きの鶏肉が入ったインド風チキンカレーはパパドも付いているし、ホールスパイスがバシッと入っている。タマネギをすりおろした手作りらしきドレッシングが美味しいサラダもいい。
そういえば、家の近くのTSUTAYAはカウリスマキ作品が減ってしまった。リバイバルの特集上映か新作がかかるのを待っていよう。
(redbook/中目黒)