2017年7月21日金曜日
夏のなぐさめ
まるちゃんとヴェヌスでノンヴェジターリーを食べた。
ボケっとしていた内臓が、スパイスのスパーリングを受けて気合いが入ったような気がした。
最近、暑さですっかり食欲をなくしていたのだ。
野菜のカレー、マトンカレー、キーマカレー、ラッサム、ワダ(豆粉の甘くないドーナツ)、チキンティッカ、シルバーのプレート上のタレントたちに気持ち良く打たれたり、ラッシーで舌先を甘やかしたりを繰り返す。
フィッシュカレーの思わぬ辛さには、辛いもの好きのまるちゃんもうつむいて赤くなりながら笑っていた。
日差しは肌に痛く、湿気はダルく、毛穴は開きっぱなし、さりとて冷房が強い場所には震え、氷の入った冷たい飲み物もお腹にひびくし、食べ物は傷みやすく虫も多い、夏が苦手だ。
対して、まるちゃんは夏女だ。この日の出で立ちは厚底サンダルにノースリーブのワンピースに高めに髪をおだんごにして、夏を楽しむ準備に満ち満ちていた。
夏が苦手な者を慰めつつ、得意な者に更に高揚を与えつつ、南インド料理は、気持ちよく満たしてくれた。
(ヴェヌス サウス インディアンダイニング/御徒町)
2017年6月17日土曜日
妄想の愛
高円寺に用事ができて、やった!となったのは、前から知り合いに勧められていた高円寺のネグラのカレーを食べようと思ったからだ。
店頭に「妄想インドカレー」の旗を見つけ、ドアを開けると、入り口すぐの壁沿いに「妄」「想」
「魅」「味」の4文字が張られていた。すてきな造語、四字熟語。
インドに行った事はないけれど、本場であまり使わない食材、スパイスを使って妄想で料理しているらしい。
シラスと香酢のビンダルとター菜のサグの2種カレーの盛り合わせ、付け合わせのニンジンのラペや大根のアチャール。追加したタンドリーチキンは、よくあるカラッとしたものでなく、しっとり煮込んだようなものだった。
どれもすごく美味しい。混ぜながら食べた。
「シラスのカレーって珍しいから定番にしたくて」と説明してくれた店主の言葉からカレー愛がダダ漏れしていた。
私もインドへ行ったことはないけど、仕事やプライベートで行っている友人が何人かいたり、本を呼んだり、妄想というより知ったかのインドが頭の中で広がっている。
妄想は、対象への想像力で幸せになっている感じが、「知ったか」より豊かで愛があるなと思う。
(妄想インドカレーネグラ/高円寺)
2017年5月24日水曜日
フレンチの様相で
店名の入ったトリコロール基調の庇、大ぶりの赤いギンガムチェックのクロスのテーブル(赤いギンガムチェックのクロスのレストランは意気が揚がる)、ワインセラーもあるし、いかにも良きフレンチビストロの出で立ちのMONTENVERS(モンタンヴェール)。
ここのランチタイムでは、マッシュポテトがたっぷり添えられた肉のソテーとか、ムニエルとかほうれん草のキッシュとサラダのプレートとかではなくて、豊富なカレーのメニューが並ぶ。
私が頼んだチキンカレーも、白い陶器のカレーポットと、同じく白いお皿には平たく盛られた玄米の混ざったお米とコールスローが添えられて運ばれてきた。
プチプチとホールのクミンとふっくらとしたチキンがたっぷり入り、トロリとしていてコクがあるのに後味軽い。品快く添えられたコールスローだってバケツいっぱい欲しいくらい爽やかだし。
誠を尽くされた美味しさなのだ。
テーブル隣、右見ても左見ても、カレーを食べるお客さんの頬は緩み、口角が上がっていた。
トレビアーン。
(MONTENVERS/恵比寿)
2017年5月4日木曜日
ネパールと長野
窓からは通りの派手な韓国系のお店の看板たちは目に入らず、店内はゆったり落ち着いている。 そして、私とレイちゃん以外は、ネパール人ばかり。
部活帰りかい?っていうジャージの男子たちとか、後からもどんどんネパール人客が。
新大久保の駅近くネパール料理屋のアーガンにて。ゴールデンウイークの真ん中にショートトリップの感。高い山の上ではなくビルの4階だけれど。
頼んだセットはネパールの山地民族のタカリ族のごはんで、盛りだくさんだった。
チキンカレー、マトンカレー、ダルスープ、ヨーグルト、ギー(バターを純化したもの)パパド、生野菜、野菜のスパイス和え、漬け物、それにディードという蕎麦粉を練ったものがこんもりと。
初めて食べたディードの滋味深い美味しさに2人ともはまった。カレーにも漬け物にも合う。
乳酸発酵の漬け物があるのは世界で中国と日本とネパールくらいと聞いたことがある。 長野のすんき漬けなんかのことだろうか。蕎麦といい、食文化に重なる所があるのかもしれない。
ディードは、なかなかの粘り気と重量感だった。乾麺の蕎麦にしたらどれくらいなのだろう。食べきれなかったのを、2人して悔やむ。
ネパールの人はこのくらい平らげるのだろうか?もり蕎麦なら何枚くらいいけるのだろう?
ネパール人の皆さん、新大久保で故郷の味もいいけど是非、長野で漬け物と信州そばを味わってみてください。特に長野に関係ない無責任広報より。
(アーガン/新大久保)
2017年4月29日土曜日
陰翳の後押し
「そうそうゴールデンウイーク頃ってこういう日あるよね」と、日差しの強い中を吉祥寺で青ちゃんとお昼ごはん所を迷って歩いていた。
開放したままの入口から感じる茶房武蔵野文庫の涼やかさに惹かれ、「そういえばここのカレー美味しいんだよ」と入った。
小石原焼きのお皿にたっぷり盛られたカレーの小麦粉とタマネギを丹念に炒めた濃い茶色は、照明を落としめの店内でより深く沈む。その中に「ゴロゴロ」と効果音が聞こえてきそうな大きな鶏胸肉やジャガイモが転がっている。 米の白さやラッキョウの艶やかさが静かにシズル感を添える。
最近10年ぶりくらいに読み返した谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を思い出した。
―― 人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う―
などと、衣食住様々なものの東洋的、日本的な陰影との美的関係について書かれている有名な著。
武蔵野文庫のカレーは`ほんとう´に美味しい。そしてこの薄暗さでより深味を感じる気がする。
いつもは食べるのが遅めな青ちゃんが、「おいしいー」と、なかなか早く先に平らげた。私も少し慌てて続いた。
(茶房武蔵野文庫/吉祥寺)
2017年4月19日水曜日
ほら いい感じ
内装がお洒落とか店員さんがやたら美形とか、そんなことではなくて入った瞬間になんだかいい感じがする気持ちの良いお店というのがあるものなのだ。
新宿御苑に近い建物の2階にあるcurry草枕もそういうお店だ。
建物に入ってすぐ食欲そそる香りが漂ってくる。美味しそうな香りをつたって階段を行くというのは、つくづく好きなシチュエーションである。
店内は、お客さんがいっぱいでも広々していて明るい。
待っている間、店の真ん中のテーブルに積んであった本や漫画から「とんかつDJ あげ太郎」を取って読んでいたら、一瞬妙にとんかつが食べたくなった。
が、頼んだチキンカレーが運ばれ、漫画を閉じ、良い香りにとんかつ欲はフッと消えた。
玉ねぎがたっぷりでトロっとしていて、チキンはかなり煮込まれホロホロだ。クローブとかの風味なのか不思議な渋味がクセになるし、すっきり胃に優しい感じだ。もっちりしたお米も美味しい。
食べ終えて、漫画をパラパラめくり、少しとんかつ欲が舞い戻った。
漫画を閉じてお会計をすると、サービス券と飴をくれた。パイン飴だった。
ほら、やっぱりパイン飴をくれるなんて(超個人的趣向)いい感じのお店だ。
漫画も読めるし。店員さんはテキパキしているし。
お店を出て踊場に漂う香りに、また脆弱なとんかつ欲は流されて、またカレーが食べたいなと思うのだった。
(新宿三丁目/curry草枕)
2017年3月25日土曜日
雀荘の母
子供の頃、友達の家に「ドンジャラ」があることが多かった。キャラクターの絵のついた子供版の麻雀のような家庭用ボードゲームだ。それで遊んだことはなかったのでルールは分からずじまいだった。大人になっても麻雀は興味がないし、縁のないものと思っていた。
よく近くを通る池袋の立教大学の近くにある古い雀荘のタイカには、カレーがあり、麻雀をするのでなくカレー目的だけのお客さんも歓迎らしい。
土曜日のお昼時、ものは試しと、恐る恐る扉を開けると、タバコの煙の匂いが鼻をついた。
その匂いの先を追うと、奥に学生らしき四人組がいて脇のテレビの甲子園を気にしつつ、盛り上がっていた。
色々と物が置かれたカウンター越しに感じの良いおばさん2人が顔を出した。
「あの、カレーを‥」と言うと、慣れた調子で「はいはい」と手前に唯一カバーのかかった雀卓の席に座らされた。大・中・小から中カレー(¥450)を頼み、どうもやっぱりこの場に浮いているなぁとそわそわ待った。
中カレーもなかなかボリュームがあった。昔ながらのシルバーの深い容器にこんもりアーモンド型に盛られたご飯、豚コマがたっぷりの黄色いトロトロカレーと真っ赤な福神漬け。
壁にはずらっと学生の寄せ書きが並んでいた。カレーのノスタルジックな優しい味は彼らにお腹いっぱい食べさせたい親心のようなものから生まれたのだろうか。
この雀荘の母カレーには、食べ盛り遊び盛りの学生たちだって雀鬼だっても心を鷲掴みにされるのだろうと思う。
(タイカ/池袋)
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