雀荘の母
子供の頃、友達の家に「ドンジャラ」があることが多かった。キャラクターの絵のついた子供版の麻雀のような家庭用ボードゲームだ。それで遊んだことはなかったのでルールは分からずじまいだった。大人になっても麻雀は興味がないし、縁のないものと思っていた。
よく近くを通る池袋の立教大学の近くにある古い雀荘のタイカには、カレーがあり、麻雀をするのでなくカレー目的だけのお客さんも歓迎らしい。
土曜日のお昼時、ものは試しと、恐る恐る扉を開けると、タバコの煙の匂いが鼻をついた。
その匂いの先を追うと、奥に学生らしき四人組がいて脇のテレビの甲子園を気にしつつ、盛り上がっていた。
色々と物が置かれたカウンター越しに感じの良いおばさん2人が顔を出した。
「あの、カレーを‥」と言うと、慣れた調子で「はいはい」と手前に唯一カバーのかかった雀卓の席に座らされた。大・中・小から中カレー(¥450)を頼み、どうもやっぱりこの場に浮いているなぁとそわそわ待った。
中カレーもなかなかボリュームがあった。昔ながらのシルバーの深い容器にこんもりアーモンド型に盛られたご飯、豚コマがたっぷりの黄色いトロトロカレーと真っ赤な福神漬け。
壁にはずらっと学生の寄せ書きが並んでいた。カレーのノスタルジックな優しい味は彼らにお腹いっぱい食べさせたい親心のようなものから生まれたのだろうか。
この雀荘の母カレーには、食べ盛り遊び盛りの学生たちだって雀鬼だっても心を鷲掴みにされるのだろうと思う。
(タイカ/池袋)