2017年4月29日土曜日
陰翳の後押し
「そうそうゴールデンウイーク頃ってこういう日あるよね」と、日差しの強い中を吉祥寺で青ちゃんとお昼ごはん所を迷って歩いていた。
開放したままの入口から感じる茶房武蔵野文庫の涼やかさに惹かれ、「そういえばここのカレー美味しいんだよ」と入った。
小石原焼きのお皿にたっぷり盛られたカレーの小麦粉とタマネギを丹念に炒めた濃い茶色は、照明を落としめの店内でより深く沈む。その中に「ゴロゴロ」と効果音が聞こえてきそうな大きな鶏胸肉やジャガイモが転がっている。 米の白さやラッキョウの艶やかさが静かにシズル感を添える。
最近10年ぶりくらいに読み返した谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を思い出した。
―― 人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う―
などと、衣食住様々なものの東洋的、日本的な陰影との美的関係について書かれている有名な著。
武蔵野文庫のカレーは`ほんとう´に美味しい。そしてこの薄暗さでより深味を感じる気がする。
いつもは食べるのが遅めな青ちゃんが、「おいしいー」と、なかなか早く先に平らげた。私も少し慌てて続いた。
(茶房武蔵野文庫/吉祥寺)
2017年4月19日水曜日
ほら いい感じ
内装がお洒落とか店員さんがやたら美形とか、そんなことではなくて入った瞬間になんだかいい感じがする気持ちの良いお店というのがあるものなのだ。
新宿御苑に近い建物の2階にあるcurry草枕もそういうお店だ。
建物に入ってすぐ食欲そそる香りが漂ってくる。美味しそうな香りをつたって階段を行くというのは、つくづく好きなシチュエーションである。
店内は、お客さんがいっぱいでも広々していて明るい。
待っている間、店の真ん中のテーブルに積んであった本や漫画から「とんかつDJ あげ太郎」を取って読んでいたら、一瞬妙にとんかつが食べたくなった。
が、頼んだチキンカレーが運ばれ、漫画を閉じ、良い香りにとんかつ欲はフッと消えた。
玉ねぎがたっぷりでトロっとしていて、チキンはかなり煮込まれホロホロだ。クローブとかの風味なのか不思議な渋味がクセになるし、すっきり胃に優しい感じだ。もっちりしたお米も美味しい。
食べ終えて、漫画をパラパラめくり、少しとんかつ欲が舞い戻った。
漫画を閉じてお会計をすると、サービス券と飴をくれた。パイン飴だった。
ほら、やっぱりパイン飴をくれるなんて(超個人的趣向)いい感じのお店だ。
漫画も読めるし。店員さんはテキパキしているし。
お店を出て踊場に漂う香りに、また脆弱なとんかつ欲は流されて、またカレーが食べたいなと思うのだった。
(新宿三丁目/curry草枕)
2017年3月25日土曜日
雀荘の母
子供の頃、友達の家に「ドンジャラ」があることが多かった。キャラクターの絵のついた子供版の麻雀のような家庭用ボードゲームだ。それで遊んだことはなかったのでルールは分からずじまいだった。大人になっても麻雀は興味がないし、縁のないものと思っていた。
よく近くを通る池袋の立教大学の近くにある古い雀荘のタイカには、カレーがあり、麻雀をするのでなくカレー目的だけのお客さんも歓迎らしい。
土曜日のお昼時、ものは試しと、恐る恐る扉を開けると、タバコの煙の匂いが鼻をついた。
その匂いの先を追うと、奥に学生らしき四人組がいて脇のテレビの甲子園を気にしつつ、盛り上がっていた。
色々と物が置かれたカウンター越しに感じの良いおばさん2人が顔を出した。
「あの、カレーを‥」と言うと、慣れた調子で「はいはい」と手前に唯一カバーのかかった雀卓の席に座らされた。大・中・小から中カレー(¥450)を頼み、どうもやっぱりこの場に浮いているなぁとそわそわ待った。
中カレーもなかなかボリュームがあった。昔ながらのシルバーの深い容器にこんもりアーモンド型に盛られたご飯、豚コマがたっぷりの黄色いトロトロカレーと真っ赤な福神漬け。
壁にはずらっと学生の寄せ書きが並んでいた。カレーのノスタルジックな優しい味は彼らにお腹いっぱい食べさせたい親心のようなものから生まれたのだろうか。
この雀荘の母カレーには、食べ盛り遊び盛りの学生たちだって雀鬼だっても心を鷲掴みにされるのだろうと思う。
(タイカ/池袋)
2017年3月18日土曜日
焼きを入れる
看板に「焼きカレーの店ストーン」とあるくらいで、ストーンのメニューの一番上には、焼きカレーが表記されているのだけど、以下(順不同の記憶)焼きスパゲティ、焼きハンバーグ、焼きハンバーグカレー、焼きロールキャベツ、焼きタコライス‥と怒涛の「焼き」メニューが並び、更にピラフやカレーライス、など続く。
ここは素直に焼きカレーにした。
表面のこんがりチーズにフォークを入れるとブロッコリーとウィンナーと余熱で固まっていく卵の入ったカレーとご飯が出てきた。
こんがりチーズとトロトロ卵ってだいたい美味しくなる二大ドーピングフードだと思うけど、それに寄らずカレー自体もすごく美味しいのだ。
猫舌にサディスティックに鞭打ってマゾヒスティックにハフハフ食べていると水もすぐ注ぎに来てくれた。私は紅茶党だけど、サイフォン式コーヒーだし、ここで焼きを入れるのはおすすめだ。
(浅草橋/ストーン)
2017年3月16日木曜日
中央線フロンティア
大学は八王子だったし、沿線には友達も住んでいるし中央線にはそこそこ馴染みがあるけど、駅の並びはいまいち覚えていないし、まるで縁のなかったのが小金井のあたりだった。東小金井も武蔵小金井もどっちがどのへんよと。
アッキーが東小金井に住みだして、美味しいカレー屋もあるから遊びにきなよ、いくよ、というやりとりがあったのは、しばらく前で、やっと遊びに行った。
連れて行ってもらったのは可愛らしい南インドカレー屋のインド富士。
辛口のチキンカレーとマイルドな野菜のカレーに付け合わせのアチャールのインド富士セットを食べた。サラサラのカレーが気持ちよく粘膜を刺激しつつ消化に優しい軽さでおいしかった。
店を出て、適当に歩いていたら公園を見つけたりした。「何もないとこだよ」とアッキーは言うけど、そう言われるとこをわざわざ歩くのが好きだったりする。
インド富士は、素敵な店だけど、今月末で閉店してしまうらしい。それでもまた東小金井には遊びに来ようと思う。
ちなみに姉妹店が高円寺にあるらしいけど、高円寺に住む友達はいない。武蔵境と阿佐ヶ谷と吉祥寺はいるのになぁ。
(インド富士/東小金井)
2017年2月25日土曜日
雀の止まり木
学芸大学の駅のすぐそば、石田と「このすごい鳴き声なんだろう?」と上を見てたら、中華屋の`二葉´の赤い庇に寄りかかった木の茂みの中に雀がたくさん籠っていたのだった。
よく見れば、お店の庇には雀の落としモノの跡がたくさん。
店頭の煤けたメニューのサンプルも空きっ腹には誘惑で、久しぶりにゆっくり話そうと会った30代半ばの女2人が選ぶお店という感じではないかもしれないものの、入ったのだった。
入り口脇の本棚には「釣りバカ日誌」などが。壁に無造作に造花や古いケースに入ったジオラマが飾られている。有名人のサインもたくさん。会議室みたいなテーブルだったり、あんまり座り心地の良い椅子でなかったり、決して綺麗な店ではないけれど、年季の入りまくった味わいに頬ゆるむ「町中華」だ。
麺類にご飯もの、定食、単品では目玉焼きから色々な旨煮などなど、たくさんのメニューが並ぶ。
迷いながらえらんだのは、大ぶりで柔らかいレバーがゴロゴロ入ったレバニラ炒めと、小ぶりでカリッと焼かれた餃子、麺より具が多そうな上海五目焼きそば、そして素朴な佇まいの半サイズのカレー。
先に、半カレーを口にした石田が「このカレー正しいよ。」と言った。トロッとして優しく、懐かしいような、万人受けしそうでいて妙に奥深いような、そんな気になるだけのような、とにかくずっと食べていられる味のカレーなのだった。
どうか、なるべく未来までここに、雀の止まり木に寄りかかられたこのお店で食べられますようにと思った。
(二葉/学芸大学)
2017年2月5日日曜日
米に貴賎はない
どんより寒い日曜日、キムとアーツ千代田3331での公演を観に。その前に御徒町駅そばの南インド料理屋のアーンドラキッチンで、お昼ご飯を食べた。
レディースセットの、チキンカレーとエビカレー、ラッサムとサンバルはピリッとしていて冷えた身体に染みいる美味しさ。甘いマンゴーのヨーグルトみたいなもので箸休めならぬスプーン休めをしつつ、パパドとチャパティ、ビリヤニみたいな味付きの米と食べる。
途中、度々「ご飯のおかわりいかがですか?」と、ズズイとお店の人がやってくる。
笑顔で熱心なので少しもらった。おかわりのお米はプレーンなものだった。
それをじっと見ながら、キムが「こうして見てると米じゃないみたいだね。」と言った。
確かにバスマティライスはそうめんを細かく切ったような形をしている。
こういうお米はおかわりしても消化が軽くていい。
うちの新潟出身の母は、お米は新潟のものが1番と思っている。インディカ種などには偏見もある。
コシヒカリを今も送ってもらっていて、私もその恩恵に与っているが、私は米に対しては保守的ではない。
ジャポニカ種も、インディカ種も、ジャバニカ種も、それぞれの風土の料理に合うのだし、適当な調理法ならどれも美味しいのだと思う。
ナンバーワンよりオンリーワン的な感じか‥。
「米に貴賤はない」
書いてどこかに貼っておきたいような。
(アーンドラキッチン/御徒町)
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